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「先生、抜かりなく手配できております」
「なんの!?」
俺の喉から驚きの声が勝手に飛び出してきた。驚きで体中の筋肉が硬直し、思わず食べかけのフライドチキンを落としそうになった。心臓は一気に鼓動を早め、身体中からは嫌な汗が吹き出しはじめた。
「お前、また余計なことをしていないだろうな?」
食欲をなくした俺は、フライドチキンを皿の上に戻した。
そうして話しかけてきたアイツにキチンと向き直った。普通に話をするためにアイツの目を見たのだが、思わず疑いの目で睨んでしまった。アイツは俺のマネージャーだ。俺に仕えて、もう二十年になる。
「余計なことなんてとんでもない」
「俺に相談もなしで、お前が勝手にやることは大体余計なことなんだよ」
この二十年間、ことあるごとにマネージャーの単独行動で痛い目にあってきた。
俺は小説家。今では一流に仲間入りをしていると自負している、それなりの小説家だ。
そんな俺は、デビューして二十年。つまり、小説家としてデビューしてからずっとこのマネージャーについてもらっているのだが、その間、様々なトラブルに見舞われてきた。
デビュー作を宣伝すると言って、俺の本を一ページずつ千切り、町中にばら撒いたり。イベントをブッキングしました、と言われて行くと、着ぐるみショーの中の人をやらされたり。文学賞の審査員に選ばれましたと言われて行くと、文房具ショーの審査員をやらされたり。アイツ的には俺を売ろうと思ってやっていることなのだろうが、その度にえらい目に遭わされているのだった。
「大丈夫。先生にご迷惑はおかけしません」
マネージャーは満面の笑みで俺を見つめた。
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