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俺はマネージャーを見ようと自分の顔を横に向けようとした。しかし、首が固まったように動かなかった。
マネージャーが俺のそばから離れた。二、三歩離れてから、俺の方へと振り返った。俺はマネージャーの瞳に吸い込まれるようにマネージャーと見つめあった。瞬間、意識が宇宙へと放り出された。
走馬灯のように、かつてサイン会に来場してくれたファンの方たちの笑顔が脳裏に浮かんでは消えていった。その走馬灯を囃し立てるように、マネージャーの囁きがなんども響いた。あのファンの笑顔は、あの子供の笑顔は、あのおじいちゃん、おばあちゃんの笑顔は、ひょっとして……。
走馬灯はやがて色をなくし、その回転速度を上げ始めた。フラッシュを繰り返し、思い出がホワイトアウトをはじめた。フィルムが切れたようにカラカラと崩れていった。
俺の楽しかった記憶。
俺の生きがい。
全てがサクラだったというのか。
穴という穴から体液を垂れ流し、俺は、その場に崩れ落ちた。
次の日。
俺のサイン会はいつものように大盛況だった。
馴染みの書店内には、パーテーションで区切られた俺とファンがコミュニケーションを取れるスペースが作られた。その外には今か今かと来場を待ち侘びるファンの人々が長い列を作っていた。
俺はマネージャーに抱えられながら椅子に座った。
俺の手はペンを握っていた。開いた本がくれば、そこにサインを書いていた。話しかけられれば、ありがとうと言いながら笑顔を浮かべていた。
サイン会来場者たちの笑顔が咲き乱れるほど、俺は嫌悪感を覚えるのであった。
終わり
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