いつからサクラは咲いていた

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 一般的には爽やかで優しいと評されるマネージャーの笑顔も、俺には恐怖でしかない。 「で? 手配って、なに?」 「あ、はい」  マネージャーはスケジュール帳をパラパラとめくった。 「明日に開催される先生のサイン会ですが」  俺は自分のスマホを手に取り、スケジュールアプリを起動した。 「ああ、サイン会ね。それが?」 「はい、サイン会の客としてサクラ五十人、手配完了しました」 「え?」  ポプン。持っていたスマホが手から滑り落ち、食べかけのフライドチキンの上で変な音を立てて跳ねた。 「これで先生のサイン会は大賑わいです」 「おい、ちょっと待て」  俺はスマホを落とした姿勢そのままでマネージャーを睨んだ。 「サクラ?」 「サクラです。あ、樹木の桜じゃないですよ」 「客のフリをするやつらのことだろ?」 「そうです。よくご存知で」 「小説家舐めんな」
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