最後の小説家

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 選びスタも、織春が投稿し始めた頃はそうやって集まった作品から輝く才能を発掘して世に送り出す、まさに「選びスター」で、多くの作家がデビューしていった。  織春も、それに続く事を夢見て作品を投稿し続けた。  でも、織春は時代に間に合わなかった。  織春が実力をつけ、頭角を現す頃には事情が変わってきていたのだ。  「自律して小説も書ける文章作成AI」通称「かけるくん」  イラストの世界では、早くからAIがネット上のイラストを勝手に学習(学習なのか盗用なのか議論のあるところだが)して、プロとして通用する作品を作るようになっていたが、AIによる作品作成の波は小説の世界にも押し寄せて来た。  面白い小説を書けるAIが出回り始めると、ネット上ではこぞって勝手に学習させて作られた小説が公開され出した。  プロの作家が何か月もかけて書くようなクオリティの作品を、素人がAIに書かせて面白半分にSNSに上げるようになった。  この業界にとってせめてもの救いだったのは、イラストより文章のほうが著作権侵害の証拠を示しやすかったことぐらいだろう。
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