最後の小説家

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 一人の作家として、評価されて世に出ておかしくないはずのその作品は、応募締め切りの翌日には選考を終えたかけるくんが、一日で書いた作品と並べられることでどうしようもなく色褪せる。  最高の素材を最高の組み合わせで活かした作品の前で、完膚なきまでに打ちのめされる。  こんなものに勝てるはずがない!  入選作品として掲載されている自分の作品は、せっかくのアイディアを活かしきれなかった失敗例だ。  ご丁寧に、どこがかけるくんに採用されたかが選評に書かれている。  それを見て、互いに褒めあう。  織春さん、今回も素晴らしいアイディアです  あのセリフ、とっても印象的な表現でした!  主人公の生い立ちの設定の掘り下げ方が秀逸でした!(^^)!  でも、物語全体としての感動は、かけるくん作品に遠く及ばないのだ。  自称作家同士フォローし合って傷を舐めあっているのだ。  叫びだしたい衝動に駆られる。  キーボードを叩き付け、二度と小説など書くものかと放り出したくなる。  できないのは分かっている。  これしか評価される道が無いのだから。  AI作家の作品が台頭し始めた頃、激しく批判、反対運動を繰り広げた作家協会があった。
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