最後の小説家

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 電子書籍を中心に活躍する作家の集まりで、アナログの出版物を中心に活動する作家たちよりもAIに「学習」されやすいことに大きな危機感を抱いていた。  それも時代の波に抗いきれず、反対運動は下火になってしまっているが、その中心的メンバーだった著名な作家の公開読者座談会が開催されることを知り、参加を申し込んだ。  織春は、誰かと自分の想いを共感しあいたかった。  同じようにこのやり切れない思いを感じている人と考えを共有し合い、自分も反対運動に加わりたいと思った。  会場に入ると、「新時代の小説家のあり方とは」というテーマが書かれたパネルが掲げられており、その下にホスト役の作家と、主催した出版社の編集者たちが座っている。  彼らを半円形に囲むように置かれた椅子が、参加読者の席だ。  織春は一番前に座った。  あの頃、いちばん過激な言葉でAIを批判していた作家から、どんな意見が出てくるのかと期待して身を乗り出すようにして聞いていた。  作家はネット小説家として、当たり障りのない苦労話や成功体験などを語った。  囲むように座っている参加者は皆コアなファンらしく、内輪受け気味な作品の裏話などに大いに盛り上がっている。
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