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最後に、質疑応答の時間がやって来た。
用意されたような質問のやり取りが何度か続いた後、手を挙げ続ける織春を、渋々といった感じで進行役の編集者が指す。
「先生は次の予定が詰まっているので、手短にお願いしますよ」
見慣れない男に対して、他の参加者の視線も冷たいように感じる。
思いがけずアウエーな空気に織春は、緊張して喉が詰まるような感覚を必死に唾を飲み込んで押さえつけ、意を決して話し出した。
何とか声は出たが、少し裏返っている。
「せ、先生は、近年のAI作家についてどうお考えでしょうか?新時代の小説家のあり方として、ぜひお伺いしたいです」
作家はにこやかに答えた。
「そうですね、これからの時代、必要とされるものだと思います。Z世代の読者はコスパとかタイパといったものを重視しますから、早く安く続きを読みたい、その要望に応えていく為に、私も自分のアシスタントとしてAI作家の採用を試行しているところです」
織春は耳を疑った、横で聞いている編集者もにこやかに頷いていて、とても自然な、当たり前のことを言っているという雰囲気だ。
「あっ、あなたは、あんなにAIに反対してたじゃないですかっ!」
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