最後の小説家

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 ee330d6a-7a78-4591-aeab-bcde22ed0daf  「選びスタ」  それは、日本最大級の小説投稿サイト。  朝からアプリの通知がやかましい。  何がそんなにたくさん来ているのかは、だいたい想像がつく。  「織春さん、入選おめでとうございます!」  「今回もグッとくる設定で、やってくれると思ってました!」  「ラストシーンのヒロインのセリフに感動しました!(^^)!」  その男、「織春 崑(おりはるこん)」というペンネームでこのサイトで活動し、定期開催されるコンテスト入選の常連、自称小説家だ。  コンテストの結果発表のたびに、フォロワーたちから祝福のメッセージが入るのでそれで結果がわかる。  普通にサラリーマンとして職を持ちながら小説を書き、気が付けばもう40代、単なる趣味ではなく副業と呼んでもいいかなというくらいには成功しているんじゃないかと思う。  なのに、いくら入選しても、何かやりきれない気持ちが募っていく。  織春は小説家になりたかった。  しかし、いきなり大きな賞に応募する自信は無かったし、出版社に持ち込みして対面で批評されるのも億劫だった。  だから、無料で公開している小説に人気が出ればプロへの道が開ける投稿サイトは、うってつけだった。
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