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途中まではみんなで「元気」「元気」「お帰り」と言っていたのに、今ではただただみんなで騒いでいるだけとなっていて・・・。
大騒ぎの中、「俺、そろそろ店に戻るから!」とサトシさんが声を出した。
「サトシ兄、ありがとね!!
デリバリーの途中だった?」
「いや、休憩中!!
ユズの家で“乾杯の酒”でみんなで乾杯してたから、そこに顔出してた!!」
「乾杯の酒で?
今日何かあったの?」
「奥さんが妊娠して安定期に入って!!
俺の所と駿の所、あとは・・・」
サトシさんが何処かに視線を移した。
そしたら、商店街中が徐々に静まり返っていき・・・
“ゆきのうえ商店街”のアーチから1人の男の人が歩いてきた。
真夏でもスーツのジャケットを羽織り、元気さんより相川さんよりも様になっている男の人。
増田ホールディングスの代表取締役の1人、譲社長だった。
譲社長が元気さんと私の目の前に歩いてきて、元気さんのことを優しい優しい顔で見詰める。
「お帰り、元気。」
「ただいま、兄ちゃん。」
元気さんは空いていた右手を譲社長に差し出すと、その右手を譲社長が強く握り、固い握手をした。
「まあ、さっき兄ちゃんとは会社で少し会ったけどな!!」
「この前実家でも会ったしね。
でも、ここが俺達の家だから。」
譲社長がそう言って嬉しそうな顔で2階を見上げた。
「元気もいてくれたから俺が増田の上にいけた。
長い放浪の旅だったな、ありがとう。」
「めっっっっっちゃ大変だった!!!」
元気さんが爆笑すると譲社長が楽しそうな顔で笑って、それから集まっていた沢山の人達を見た。
「“ゆきのうえ商店街”の増田一家、長男も次男も帰りました。
俺達のせいで、申し訳ありませんでした。」
譲社長が頭を下げると元気さんも頭を下げた・・・。
それにより商店街の中が無音になる。
そんな中、優しい優しい声が聞こえた。
「お陰様で強い強い天使達をみんなで育て上げることが出来たよ。」
声の主の方をみんなが一斉に振り返った。
長峰酒店の店主、“ゆきのうえ商店街”の“麒麟”と呼ばれているオジサンだった。
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