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麒麟が優しい優しい顔のまま、元気さんと手を繋いでいる私のことを見てきた。 「それで元気は本物の天使を連れて帰って来たのか。」 「あの・・・父が神社の神主ではありますけど、私はただのそこの娘でして。」 「いやいや、国光さんは神様だからな。 あの神社は願い事をよく叶えてくれると大人達が昔から何度も言っていた。 だから“ゆきのうえ商店街”の天使達には昔からあの神社の神主さんに名前を付けてもらっている。」 そう言って、麒麟は嬉しそうな顔で集まっているみんなのことを見渡した。 「どこが道かも分からないような雪の上でも歩けるような、強い強い子達になった。 巨大なモンスターにも立ち向かっていけるくらい、強い強い子達に。」 それから、「駿、ユズ、サトシ。」と呼び・・・ 「神様に子どもの名前付けて貰えたか?」 そんなことを聞くと、宝田さんの息子さんも譲社長もサトシさんも嬉しそうな顔で頷いた。 「え!!!?兄ちゃんの所も!!!?」 元気さんが元気な声を出すと、譲社長が頷きながら後ろを振り返り・・・ 「結子。」 と、結子さんを呼んだ。 結子さんは元気さんの昔の家の前に1人で立っていて、みんなが結子さんを譲社長の元に歩かせて・・・ 「会社で国光さんに名前頼んできたから。 社長室に入った瞬間に宮司の格好してて流石に驚いたけど。」 そう言ってメモ用紙のような紙を結子さんに渡している。 それを結子さんは嬉しそうに両手で抱き締めると、譲社長が少し怒った顔でみんなのことを見た。 「俺がいない間に俺の家で先に乾杯するなよ!!!」 譲社長の言葉にみんなが笑いながら謝ると・・・ 「よし!!!!みんなで乾杯するぞ!!!!」 須崎さんが大きな大きな声を出した。 「タカラ兄!!!乾杯の酒!!! 今日はみんなで乾杯するぞ!!! お腹に来てくれた天使達に、それと元気が彼女を連れて帰って来たからな!!!」 「竜さん・・・!! 俺、母親に似て酒一滴も飲めない!!」 「大丈夫だよ!! 乾杯の酒を何だと思ってるんだよ!!? タカラ兄が拘り抜いて作った最初の純米酒、“ゆきのうえ商店街”の奴らにしか出さないくらい希少な酒だぞ!!? 酔っ払うわけねーだろ、他の純米酒でもほとんど酔っ払うことねーのに!!!」 「確かに・・・!! “元気”を美鼓ちゃんと飲んだけど、全然酔わなかった!!」 「だろ!!? ・・・それより元気、彼女のことを“ミコちゃん”なんて呼ぶなよ!! いくら巫女だからって酷い奴だな!! まあ俺達もそう呼んでるけど・・・。」 須崎さんがそんなことを言い出して、いつもの気の良いオジサンの表情をして私に笑い掛けてきた。 「ごめんね~! 今さらだけどさ、名前教えて貰えるかな?」 そんことを言われてしまい・・・ 「美鼓ちゃんは美鼓ちゃんだよ!!! 国光美鼓ちゃん!!!」 元気さんが少し怒りながら言うと、みんなが一瞬無言になり・・・ 「「「「「「え・・・!!!?」」」」」 大きなリアクションが重なった。 「そうなるよな!!!?」 元気さんだけは爆笑していたけど・・・。 ザワザワとしている空気の中、勘違いさせたままだと良くないと思い伝えた。 「あの・・・私の父なんですけど、父は婿養子でして。」 私の言葉に全員が目を真ん丸にして一斉にこっちを見てきた。 沢山の視線には慌てるけど、それでも言葉を出した。 「あと・・・よかったらうちで飲みますか? 広いので全員入ると思います。」 お祭り騒ぎの商店街の人達を引き連れ、元気さんと並んで先頭を歩いて家を目指した。
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