落ちこぼれの守護妖精

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 うつ伏せになってふかふかの枕に頬を埋めると、ジークベルト家の勤勉なメイドが仕込んだラベンダーの精油がふわりと鼻先に漂った。 「……この香り、好き」  うとうとと心地よく微睡(まどろ)むうちに、ふと枕元に座るうさぎの縫いぐるみが目に留まる。  何気なく視線を逸らせた……けれど、すぐその違和感に気付いた。  ——ルルが不在のあいだ、縫いぐるみは書卓の上に座らせていたはず。夕方に見た時は、まだそこに……。 「……ルルっ」  起き上がって縫いぐるみを手に取れば、ふわふわの被毛が指先にどこか懐かしいあたたかみと柔らかな感触を思い出させた。 「ルル、ルル! いるの?! いるなら返事をして……」
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