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「そうですよね…こんな広い部屋にお泊まりなんて、もう二度と出来そうにないですもんね?せっかくのご厚意ですし、一生懸命満喫してみます」
アンネが両手の拳を握りしめた。
一生懸命満喫する必要はないでしょ…
相変わらずアンネは真面目だなと小さく笑みを浮かべた。
「…さあて、私はゆっくりと温泉に浸かりに行こうかな」
部屋の入り口付近にあったソファの上に手提げ鞄を放り投げて、伸びをしながらそう言った。
すると、アンネが力強く反応する。
「私も行きます!」
「…えっ!?」
アンネの言葉に思わず、固まってしまう。
「…ダメですか?」
アンネの表情が曇る。
「い、いや、ダメじゃないけど…だって温泉だよ?裸だよ?すっぽんぽんだよ?」
少し動揺気味にアンネに確認する。
「はい、温泉ですから裸は当然です。私たちは女同士ですし、何も問題はない筈ですが?」
アンネが毅然とした表情でそう返す。
…アンネの言う通りだ。
私たちは女同士…別におかしくはない。
…だだ、アンネは私の推しだ。
そう簡単に推しの裸を見てしまってもいいのだろうか…?
いや、よくない…よくないぞエメ!
…だが、推しを悲しませるのもよくない。
一体、私はどうすればいいんだぁぁ!!
心中でそう叫びながら、思わず頭を抱えた。
すると、アンネが私の腕を掴んだ。
「さあ、行きましょうエメさん。こんなに部屋が広いですもの。きっと、温泉も広いに違いないですよ」
とアンネが有無を言わさず、私を部屋の出口へと誘う。
…すっかりアンネのペースだ。
それにしても、もうすでに満喫する気満々じゃないか…?
まっ、せっかくタオカモイから出たんだし、アンネもたまにはゆっくりするべきよね。
アンネに腕を掴まれながら、私はアンネと部屋を出た。
部屋から出ると、すぐにラストアが廊下を歩いてこっちにやって来る。
そして、温泉に入りたい旨を伝えるとすぐにラストアが私たちを温泉がある場所へと案内するため歩き出した。
念願の温泉だ。
いや、本当に何年振りだ…?
と嬉しさが抑えられず、思わず顔がニヤけてしまう。
ああ…温泉…
しかも、推しと一緒に入る温泉。
想像するだけで身体が溶けてしまいそうだ。
「…エメさん。ヨダレが出てますよ…?」
と隣を歩くアンネに指摘されて、すぐに袖で口を拭った。
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