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魔族のイメージ
仕方なくアンネを連れて行くことになったオーリュウと私はアンネを連れて森の中を進んだ。
そんなに深い森ではなかったらしく、しばらくするとすんなり森から抜けた。
その瞬間、陽射しが私たちを照らす。
「…ここって本当に魔界ですよね?」
隣を歩くアンネが私に問いかける。
「そうだよ。間違いなくここは魔界だよアンネ」
クスッと笑いながら答えた。
「魔界ってもっとこう暗いイメージがあって…きっと日が昇らないのかと思っていました」
アンネの言葉に前方を歩いているオーリュウが小さく笑った。
「…もし、そうなら私たち魔族はとっくに滅びていますよ。それか光を求めて人間界を征服していたでしょうね」
オーリュウの冗談に私は思わず笑ってしまう。
「大抵の人間の魔界や魔族に対するイメージは一方的だからね…魔界は恐ろしい場所で魔族は人を襲う凶暴な種族だ。本当はそんなことはないんだよ」
…そうだ。
自分と違う種族のイメージなんて大抵はそんなもんだ。
よく知らないで決めつけて勝手に嫌悪感を抱いている。
「…でも、タオカモイを襲って来た盗賊たちや偽者の勇者だったアイリーンさんは自分たちの村を魔族に襲われたんですよね?さっきの魔の森と呼ばれる森の近くに村があったせいで…」
アンネがやや辛辣な表情で言った。
それを私が答える前に前を歩くオーリュウが口を開く。
「…たしかにそういう魔族がいるのは事実です。勝手に人間界へ行ってはそういう風な残虐なことをしでかす輩が…でも、逆も然りです。魔界に勝手にやって来た人間たちが魔界の町や村を襲って魔族狩りを行う。魔族の私にとって、そういった事実もあることは人間のあなたにも知っておいて欲しい」
オーリュウが背中を向けながら、アンネに語った。
「…あと、人間たちは同じ人間界に住むエルフに対して差別だけではなく、時に金目当てで傷つけたり連れていったりもする。魔族はエルフを同族と思っているので、まずそういったことはしない。私はエルフに対する行為だけは人間をよく思っていません…」
オーリュウがやや感情的になる。
たしかオーリュウは魔族だけど、厳密に言えばエルフだ。
昔、どこかでそのことを聞いたことがある。
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