温泉

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クナモテアの町にあるオーリュウの御屋敷に仕えるメイドのラストアにアンネが魔界に来た経緯(いきさつ)とドシーがここにいない理由を説明し終えたあと、ラストアと屋敷の廊下を一緒歩いていた。 私とアンネが今日泊まる部屋へとラストアが案内してくれているためだ。 それにしても馬鹿でかい廊下だ。 ラストアのすぐ後ろをアンネと並ぶように歩きながら、そんな感想を抱く。 すると、ラストアかピタリと足を止めた。 「こちらがエメ様とアンネ様にお泊まり頂くお部屋です。どうぞご自由にお好きにお使いください。もし、何かあれば何なりとお申し付けくださいませ」 廊下にたくさん並ぶドアの一つの前でラストアが表情を変えずに淡々とそう説明する。 アンネがドシーと入れ替わって魔界に来たことを説明した時も、彼女は表情を変えることはなかった。 教育が行き届いているのは何よりだが、もう少し感情を出した方が愛想が良くて好感度が持てるというものだと心中でため息をつく。 ラストアは私たちを部屋へと案内したあと、すぐに歩いて来た廊下を戻っていった。 きっとメイドである彼女の仕事はたくさんあるのだろう。 離れていくラストアの背中を見ながら、お疲れ様と心中で呟いた。 それから、視線を部屋の扉へと向ける。 正直、扉からして豪華な部屋だということが伝わってきて、私はともかく隣に立っているアンネは完全に固まっていた。 仕方なく、私が扉のドアノブに手を掛けて扉を開き、部屋の中へと先に入る。 あとから、アンネが恐る恐るついて来た。 「わぉ!?」 部屋を見て、思わず声を上げた。 「こりゃ、また随分と立派な部屋だな…」 「…部屋なんですかコレ?広間じゃなくて?」 アンネがだだっ広い部屋を見渡しながら疑問を口にする。 アンネの言う通り、部屋の広さは部屋という枠を超えていて、広間くらいの規模だった。 タオカモイの教会にある私の部屋がおそらく30…いや、40は入るんじゃかいだろうか…? そして、この広い部屋の中央にはおそらく私たちが今夜横になるであろうカーテン付きの大きなベッドが二つ並んでいた。 …おいおい、これはやり過ぎだろ? クラリスを訪ねて、インナリィ城に行った時もそれなりの部屋に案内はされたが、これは最早度がすぎる。 「…これは落ち着けませんよね…?」 アンネが呆気に取られた顔でそう言った。 その言葉に二度ほど頷く。 正直、私は教会の自分の部屋くらいの広さが一番落ち着くのだ。 まあ、部屋を変えてくれというのはせっかく用意してくれたオーリュウに失礼だし、今夜は観念するしかない。 「まっ、緊張していても仕方がないし、せっかくだから豪華を満喫しようよアンネ」 とアンネの背中を軽く叩いた。
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