何で私を指名する…!?

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何で私を指名する…!?

ミーナと共に村の広場へと向かった。 広場には既に人集りが出来ていて、そのなんちゃって勇者様の姿がよく見えない。 と言っても勇者様なんて私は興味がなかった。 ただ、掃除をサボる口実が欲しかっただけ。 勇者様見たさに人集りに寄っていくミーナの背を見ながら、そう思った。 「凄い!勇者の免許証だ!本物の勇者様だ!」 「わざわざこんな村にお越しくださり、ありがとうございます!」 そんな声が人集りから聞こえきた。 勇者協会が行う試験に合格すれば、勇者の証となる免許証が交付される。 その免許証を勇者は見せることで、町や村で協力を得ることが出来るのだ。 「私は勇者アルテガ!南のフリレインからやって来た!この村の近くにはドラゴン谷があると聞く!誰か道案内をしてくれないだろうか?」 人集りの中心から、勇者と名乗る男の声が聞こえてきた。 そして、人集りの隙間からその勇者の顔が視界に入る。 赤い長髪の顔が整った男。 なるほど、ミーナがキャーキャー言うわけだ。 その時、ふとその勇者様と目が合ってしまう。 慌てて視線を逸らした。 「そこのシスター!すまないが君に道案内を頼みたい!」 なっ!? 勇者の言葉に耳を疑った。 恐る恐る逸らした視線を戻す。 すると、長い髪の勇者様が私に熱い眼差しを送っていた。 周囲の村人もそれに続くように私へ視線を向けてくる。 「ミーナご指名だよ」 すぐにミーナの側へと移動して、ミーナの肩をポンっと叩く。 「いや、私は君に頼みたいんだ。ダメかな?」 勇者様が私にそんなことを言う。 勇者様だけなら気にせず瞬時に断るのだが、周囲の村人たちの視線がそれを許さない。 「えっ…と、私は大事な教会のお仕事がありまして…道案内は無理かと思います…」 懸命に言い訳を繕う。 「いや、教会のことは気にしなくてよい」 急に聞き慣れた声が背後から聞こえてきた。 げっ…神父様…!? 「勇者様がお困りになられていらっしゃる。エメよ助けになってあげなさい。それもシスターの大事な仕事ですよ」 そう言った神父様の手には私がここに来る前に投げ捨てた箒が持たれていた。 私は観念して首を縦に振る。 何で私を指名するんだよ…このなんちゃって勇者様が…! と心中で悪態をついた。
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