第ニ章:降り注ぐ太陽の日差しが眩しくて

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 真白が『佐伯真』としての芸能活動を辞めてから数年が過ぎた。最初の頃こそ表舞台に出なくなった佐伯真を話題にするマスコミもあったが、その後も似たような子役が次から次へとデビューし、世間を賑わせ、いつしか誰も噂にもしなくなった。  真白も俗にいう温室育ちの子息子女が通う学校に入学し、ごく普通の高校生活を送っていた。もう二度と芸能界に戻ることもないだろう…そんな事をぼんやりと思っていた時「事件」が起きた。 「ただいま」  真白が玄関のドアを開けると綺麗に揃えられた皮靴が並べられていた。母親の仕事の関係上見知らぬ人が自宅にいる事には慣れている。とりあえず母親の手前挨拶だけはしておこう。リビングのドアをあけるとそこには見知った人物がソファに座っていた。 「川嶋さん?」 「真くんか! こんにちは。久しぶりだね。だいぶ大きくなって雰囲気がかわったね」  目の前にいた初老の人物は、佐伯真に目をつけて芸能界に売り出してくれた事務所の社長、川嶋だった。母親と知り合いではあるが、真白が芸能界を辞めてからは会う機会もなかった。 「真、ちょっと話があるから座って」  母親に促されソファに座ると川嶋が待っていたとばかりに話を始めた。 「実は真君に相談があって今日は来たんだ。単刀直入に言って『アイドル』として芸能界に戻らないかい?」 「え?」  アイドル? 僕が?  まさか予想もしてなかった提案に真白は言葉が出てこない。川嶋はなお、話を続ける。 「今回コンセプトを設けてアイドルユニットを組もうと思っていてね。『パフォーマンス力』『演技力』『歌唱力』に秀でた三人組グループで…とりあえず一人は決まっていてね」
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