第ニ章:降り注ぐ太陽の日差しが眩しくて

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 翌日、真白は指定された時間に事務所の控え室にいた。今から「トリコロール」の初顔合わせと衣装採寸のスケジュールと聞いた。正直今日は顔合わせ程度でデビューについては段階を踏んで時間をかけてするのかと思っていただけに、あまりの展開の早さに真白自身、正直驚いていた。 (川嶋さんは本当に策士だな…)  ふとそんな事を考えていたら、ドアをノックされ別室への移動を促された。 「失礼します」  真白がドアをあけると、視線の先にはガッツポーズをしたままこちらを向くそいつの姿がうつった。どういう状況でガッツポーズしてるのかはわからないが、おそらく彼も人が入ってくる事は想像していなかったのだろう。 「緋色、彼が雪野真白だ。君と同じユニットでデビューをする仲間だ」  その場の奇妙な空気感に真白はこみ上げてくる笑いをぐっと堪えながらガッツポーズしていた人物に手を差し出す。 「よろしく緋色」  形ばかりの握手をしようと真白が差し出した手に緋色は見向きもせず、川嶋にどういう事なのか?と詰め寄っている (本当に三年前と何もかわってないんだな)  三年芸能界にいたら色々な経験をし、それなりに上手に生きるすべを身につけて、多少、馬鹿は馬鹿なりに学習しているのかと思っていたのにあっさりと裏切られた事に真白は驚きというより、正直呆れ返っていた。本気でコイツは芸能界でやっていくつもりがあるのだろうか。 「君たちは三人組でTricolore(トリコロール)というユニットでデビューするんだ」  川嶋は今回のデビューの経緯を改めて緋色と真白に話す。 「さ、三人? 俺、一人ではないんですか?」  ああそういうことか。真白は緋色のガッツポーズの意味をようやく理解した。ソロデビューと勘違いしていたのか。どこまでおめでたい人間なんだ。 「君が一人? 笑わせるね」 「なんだと?」  敵意むき出しな緋色に真白は言葉を続けた。 「せいぜい僕の足をひっぱらないでくれよ、緋色」 「…」  愛想笑いのひとつも出来ないのか。こんなリーダーの下グループ活動すら大丈夫なんだろうか。真白はため息をつきつつ、もう一人のメンバーが待つ衣装室に向かった。
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