第ニ章:降り注ぐ太陽の日差しが眩しくて

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第ニ章:降り注ぐ太陽の日差しが眩しくて

<真白Side >  一番最初の蒼と緋色のインタビューが終わり、少しの休憩を挟んで蒼と真白のインタビューが始まった。 「先程蒼くんと緋色くんにはお互いの印象を聞いたけど、蒼くんと真白くんはお互いどう思ったのかな?」  蒼と真白がにこりとお互いの顔を見合わせる瞬間にカシャッとカメラのシャッター音が鳴る。 「そうですね。蒼は、緋色も話していたかと思うのですが、歌についてはグループの中では、ピカイチで僕も緋色も一目置いた存在です」 「ありがとう! 真白くんや緋色から言われると照れるな。真白くんは演技が誰よりも上手くて、凄く空気を読むのが上手だから僕達グループの調整役かな」 「蒼から、そう見えているのはうれしいね」  流石社会人である蒼はグループ内の力関係を把握していて、バランス感覚が抜群だ。時折年の差を忘れてその判断能力の高さに嫉妬することもあるが、高校生と社会人の六才差はやはり大きいし、蒼がいるからこのグループは成り立つのであって、脳内が筋肉で出来ているような人間がもう一人いたら流石の真白でもコントロール出来ずに失速しバラバラになるのは目に見えている。寧ろ調整役なのは蒼であって、蒼がいなかったらトリコロールは今この舞台に立てていなかっただろう。 (最初は本当に散々だったな…)  ふと真白は、緋色と蒼と出会った時の事を思い出していた。  真白が芸能界で活動を始めたのは小学生になった頃だった。真白の母親は『椿まりこ』という、ドラマや舞台やCMにその姿を見ない日が無いくらいの大物の女優であった。当時大学講師であった真白の父と結婚してからも仕事をこなし輝き続ける彼女には同性の評価も高くそれは『上司にしたい俳優』で何度も一位を獲得するほどだった。  しかし小さかった真白は、母親が仕事の為に家を数日あける事には寂しさを感じていたし、普通の母親がうらやましくて仕方なかった。そんな気持ちを母親は感じとったのか、時折スタッフに許可をもらっては仕事現場に真白を連れていったのだった。  それは女優である母親のCM撮影にたまたまついていったら共演するはずの子役が高熱で撮影に来れなくなり、代役として出たCMが思いの外、好評だったのがきっかけだった。母親と共演し、評価をしてもらえる事は真白にとっては『母と少しでも長くいれる』ということだった。演技の楽しさというより、母親と一緒に過ごせる時間が欲しくて、CMやドラマの仕事にのめりこんでいった。  当初は本名である『佐伯真』を名乗っていた為に母親の存在には誰も気がつかなかったが、その演技力が知られると母親の存在がクローズアップされ、『佐伯真』から『椿まりこの息子』という形に世間の評価は移っていった。 『大女優の血を引く子供は演技がうまく気遣いが出来て当然だ』 『さすが椿まりこの子供だ』  その世間の声が大きくなるのつれて、演じるということが、真白にとって苦痛以外の何物でも無くなっていた。どんなに台本を読み込み、役柄を研究し演じたところで『佐伯真』として、評価はしてもらえない。制作サイドとしては椿まりこの名前が欲しいだけだった。  いつしか真白は自分を心の奥底に仕舞い『自分自身を演じる』事が普通になっていた。
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