第ニ章:降り注ぐ太陽の日差しが眩しくて

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 周囲は自分を媚びへつらう。そんな生活に馴れきっていた頃、二時間ドラマの撮影の話が舞い込んだ。当時売り出し中のアイドルが先生役をし、売れっ子の子役の佐伯真が生徒役をするということで放送前から何度も特集も組まれるほどの注目度だった。  いよいよドラマもクランクインをし、今日は生徒役のエキストラと教室でのシーンの撮影だった。エキストラが全員集合したあとで、遅れて主役の登場だ。 「おはようございます」  真白に向けてエキストラ達が挨拶をする。 (とりあえず適当に挨拶するか)  とってつけたかのような挨拶を周りにしながらスタッフとの打ち合わせ場所に向かう。 (今日のエキストラもなんだか冴えないな)  スタッフと打ち合わせをしながらキョロキョロ周りをみまわす。エキストラだから演技は問われないのだろうが、それにしてもまさに「没個性」であり、真白から見たら何故ここにいるかわからないような子役ばかりだった。きっと成長と共に不必要となり消えていくのだろう。  そんなエキストラの中で大きな声でケラケラ笑いながら周りの子役と話す赤みがかった髪の人物に目が止まった。そういえばさっき一際、大声で挨拶をしたヤツだ。エキストラでも見たことのない顔だから恐らく新人なのだろう。 「真くんスタンバイお願いします!」  現場から声がかかると一瞬にて空気が変わる。真白はこの瞬間が好きだった。誰もが真白の演技に注目し、世界が自分中心に回る錯覚と優越感にひたることの出来る時間だ。  台詞も誰も間違えることなく一発OKが出ると張りつめていた空気が安堵感で満たされる。 「佐伯君と共演して緊張で心臓飛び出るかと思った」 「台詞間違えて佐伯君から出演禁止にされた子がいるらしいよ」 「うっそ…」  休憩時間に子役の間でそんな話が交わされているのが聞こえた。勿論そんな下らない理由でエキストラを切ったこともないし、そもそも真白にそんな権限などあるはずがない。しかし一々否定するのも馬鹿らしいし、それで現場にいい緊張感が生まれるなら寧ろそれで良かった。 「真くんお疲れさまー」  次々とスタッフが声をかけて通りすぎていくなか、一人の子役に呼び止められる。 「挨拶くらいしろよ。主役だからって許されることじゃねーだろ」  呼び止めた相手は先程大声で子役仲間と話していたエキストラだった。
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