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成瀬は感慨に耽った。一年前に配属された整形外科病棟で いびられ蕁麻疹が出るほど苦手としていた男を部屋へ招きコトに及ぼうとしている事実に。人生、何が起こるか分からない――― そう感じ入りながらカランを捻るとシャワーを浴びた。
あの男と寝るために身を清めているんだ、俺は⋅⋅⋅⋅⋅⋅ そう呆れながら思うのは、これから行われる秘めごと。
どんな風に抱くんだろう? キスの時はしつこいかったから、セックスもそんな風だろうか⋅⋅⋅⋅⋅⋅
後輩を指導し、同僚に意見する時は執拗に責め立てるフシがあったので、そんな感じかも。自分にはМっ気はないから、いたぶられるのは御免だな⋅⋅⋅⋅⋅⋅
そんなことを心配しながら、成瀬は片足をバスタブに乗せて股を広げると陰部にシャワーを当てた。そして、指にボディソープを垂らすとアナルに添え、解しながら中へ侵入させて指が届く範囲を丁寧に洗った。
塔矢がここを使うかどうかはわからない。もしかしたら、オナニーし合うか素股でやって終わるかもしれない。だけど、万一に備えて洗うことにした。
松岡と別れてから、成瀬は寂しさを紛らわせるために そこを弄ることがあった。アナルセックスの良さを教えられ、時々その顔を思い浮かべながら体を慰めていた。なので、今している行為にペニスが芯を持ち、角度がつきはじめる。
だから、挿入されても苦痛を感じることはない。むしろ、久しぶりの快感に下半身は悦び興奮するだろう――― そう期待しながら、指で広げてシャワーを当て直腸を念入りにすすいでいた時だった。「ねえ……」と、声を掛けられ飛び上がらんばかりに驚いた。
慌てて振り返ると、全裸の塔矢が立っているではないか! リビングにいるはずなのになぜここに? と、成瀬は怒りと動揺がないまぜになった視線で睨みつけたけれど、初めて見る塔矢の裸体もしっかり捉えていた。
体躯の良さは服の上から分かっていたが、実際もそうであった。先ほど自分を抱いた腕は逞しく、肩と胸には筋肉が盛り上がり、腹は六つに割れていた。そして、体の中心で存在を放つ男の象徴は猛々しく反り返っていて……
同じ男なのに別の生き物のようだ。そして、凶器のようなアレに刺し抜かれたら――― と、期待と不安に胸が騒ぎだしたのも束の間、自分の置かれた状況を思い出して唇をワナワナ震わせた。
股を開き、肛門に指を突っ込む姿を見られた。恐らく、熱心に中を洗う様子もつぶさに。こんな情けない恰好、松岡にだって見せたことがないのに!
そんな成瀬の動揺を知ってか知らでか、塔矢は目の前の尻をまじまじ見つめると、
「そこ、使っていいの?」
「……」
「良かった。おれ、アナル派だから…… っていうか、成瀬さんがネコで良かった。バリタチだったらどうしようって心配してたんだ。まあ、例えそうであっても何とかするけどね」
みなまで言わさず、成瀬が怒声を上げる。
「なに勝手に入って来るんだ! さっさと出てけよ」
「一緒に入りたいと思って」
「俺が上がって来るまでリビングで大人しくしてろ!」
「シャワーの音を聞きながら指をくわえて待ってろっていうのか? そりゃあ拷問だわな。壁を隔てた向こうに全裸の君がいるっていうのに」
そう言うか言わないうちに、塔矢はズケズケと浴室に侵入し後ろ手で扉を閉めた。そして、牙を剥いて威嚇する成瀬を交わして腰に手を回すと、はち切れんばかりに勃起したペニスを尻の割れ目にグイグイ押しつけてきた。
「気づかれないように こっそりと見てたけど、滅茶苦茶エロくて出そうになった」
「お前には遠慮とかデリカシーがないのか?」
「初めて会った時から『色気が半端ない』って感心してたけど、裸だとそれが100倍増しになるな」
「人をあれほどコケにしておきながらケツばっか眺めてたんだ」
「好きな子に意地悪をする子どもの心理に近かったんだ。おれ、Sっ気があるから」
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