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Episode3.つま並べ
ホイッスルと同時に、吉田先輩は、動きだす。
先ずは、自分の目の前に、赤い爪楊枝を1本。
そして、その横に緑の爪楊枝をミリ単位で斜め右にして、並べる。
吉田先輩は、1本1本丁寧に、真剣な顔つきで爪楊枝を並べていく。
何本か並べ終えたところで、鴨川先輩は、ストップウォッチを見ながら、
「1分経過。」
そう発言する。
吉田先輩の額から、汗が吹き出している。
素早く、そして、丁寧に、1本1本色の違う爪楊枝を並べていく。
やがて、爪楊枝は緩やかなカーブを描きカーブしていく。
「2分経過。」
鴨川先輩が言う。
やがて、分度器のように半円状に爪楊枝が並べられていく。
黒い床にカラフルな爪楊枝がキレイに並べられて、地味に綺麗だと感じたヨシキ。
「3分経過。」
爪楊枝は、吉田先輩を囲む型でぐるりと円を作っている。
「4分経過。」
もうすぐ、円を描こうとしていた。
全てが並べ終えて、爪楊枝は、夜空に浮かぶ花火のように、カラフルな円になって完成した。
ピュー〜〜〜。と、ホイッスルが吹かれる。
鴨川先輩が、ストップウォッチのタイムを発言した。
「4分59秒。ギリギリ4分代ね…。でも、早くなったわ。腕を上げたわね、吉田くん。爪楊枝も綺麗に並んでいて、いいと思うわ。」
と言う鴨川先輩。
「でも、ここと、ここ、赤が二連続で置いてあるわ。コレは、減点対象ね…。」
と、審査に入る鴨川先輩。
「点数的に言ったら、『菊五番』辺りの点数じゃないかしら?」
鴨川先輩が言った。
「くぅ〜……。菊五番か〜。」
と、悔しがる吉田先輩。
何が、なんだか、分からないヨシキ。
……なんだ、この競技…。
聞いたことも見たことも無いぞ……。
若干、楽しそうではあるが……。
「これが、「つま並べ」よ。一見、爪楊枝を並べるだけの様にも見えるけど、タイムだけでなく、色や形、フィギュアスケートのように美しさも見られる競技よ。全てを合計して、点数を競い合うの。全国大会も、勿論あるわ。」
鴨川先輩が言う。
………勿論っすか。
一体、どこ発祥のスポーツっすか……。
ヨシキは、鼻水を垂らした。
「ヨシキくん。」
と、鴨川先輩が言う。
「はい?」
ヨシキが言う。
「私達と一緒に、……。」
と、
「全国大会に出場しましょう!…。」
キマッたと言う感じで鴨川先輩の顔は、喜びの表情に満ちていた。
ヨシキは、正直、意味の分からない大会に出場するのは嫌だったが、鴨川先輩の可愛いさと圧に負けて、嫌々ながら、出場する事に決めた。
「わ、わ、わ、…分かりました。…出場します…。」
ヨシキは仕方なくそう言った。
「そうでなくっちゃ!」
鴨川先輩は輝いていた。
ーーーto be continued...
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