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『本当に、本当にすまない。ああ、ごめんなさい…』
仕方がないので、私は島の管理を任された。その事実を隠そうともしない彼の表情。
出発してから暫く、彼は私に謝ってばかりいた。
『だって赤ちゃんが乗れないなんて、おかしいじゃないか。僕の妻だって妊娠していたんだ、納得できなかった。そうだろう?その……そこで生きるのは、とても難しいから』
私は黙ってうんうんと頷く。これは手紙。反応をしても届く事はないのだが、彼の親切な行動を思い起こす度、私の頭部は縦に揺れるようになっているのだ。
『確かに母親は貧民層で、確りとした教育は受けていない。赤ちゃんの父親はとっくに本当の家族と出発済さ。でもだからといって、その……不適格だっていうのかい?あらゆる子供は未来を享受していいはずだ。そりゃあ確かに『ケレブルム』の判断はいつだってベストなんだろう、機械は誤らない。でも……ああ、すまない。君に対して…』
何もかまう事はない、負い目を感じる必要などないのだ。私はとても重いよ。どんな親子とて、二つ合わせても私より重量で勝る事などないのだから。
人間は体調を感情で表現する。私は違う。だからもう良いのだ。
ベストでなくとも、その判断は適切だった。それで十分じゃないか。
『ああ、手紙を送るよ。必ず送る。毎日送る』
ロケットは日々この星から離れていく。はじめは即時に到着していた手紙も、日を追う事に間隔が開くようになってしまった。今は日内に届いているが、やがてそれも難しくなるだろう。
ロケットは加速し続ける。宇宙は膨張を続けている。
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