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そっと、リークさんの背に手を回す。暖かい。
――誰かを抱き締めたいと思ったのは、初めてだった。
(――ごめんなさい、)
ごめんなさい、リークさん。
眼球が熱くなる。目が潤むのを感じた。
(ごめんなさい)
貴方はこんなにも優しくしてくれているのに、生きる理由を作れない自分が嫌です。嫌で、嫌で堪らない。大っ嫌いだ。
貴方が泣いているというのに、何も言えなくて。こんなことしかできなくて。
一緒に泣くこともできない。泣き方を忘れてしまったから…なんて、そんなの、言い訳にしかならないけれど。
僕の目はただ潤むだけで、熱を訴えるだけで、一滴も涙を溢せやしない。
(……これが、僕じゃなくて、あの子だったら…)
あの子だったら、彼と一緒に泣けただろうか。彼を泣かせるようなことには、ならなかったのだろうか。
僕は、どうするのが正解だったんだろう。
胸の中に広がる気持ちを持て余したまま、僕は彼の胸に額を押し付けた。とくん、とくん、と聞こえてくる規則的な心音。伝わってくる優しい体温。
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