プロローグ

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プロローグ

「おい、大丈夫か?」  肩をゆすられ、わたしは急激に意識を取り戻した。  ここは・・・そうだ、反逆したアンドロイドの居たラボだ。  分子生物学の実験機器が所狭しと並べられ、壁にはバイオハザードマークが刻印されている。  名前は? 睡眠薬を注射された上、殴り倒された後頭部が痛む。さすりながら、マイナンバー記録端末を開いた。パスワードを入れ、ロックを解除する。 『剣持スズカ。26歳。日本国籍。性別:女性。性自認:女性 独身』  そうだ。スズカだった。  3Dの顔モデルが映し出される。ほっそりした顔。短くまとめた黒髪。薄い眉。茶色い瞳。真一文字に結んだ唇。  わたしの顔。 「もう大丈夫だ。アンドロイドに襲われるなんて、とんでもない事故に出会ったもんだな」  黄色いレスキュー服を着た隊員が、スズカをひょいと抱き上げた。胸には伊藤と名前が刻印されている。 「救急車に乗る前に、もう一度彼女が握っていた紙を見せて」 「まあ、いいけど。大したことは書いてないぜ」    そう言いながら機能停止し、融解したアンドロイドの指先に絡まっていた紙を、伊藤は無造作に取った。 『火星用インフルエンザワクチン。人間用。人間アレルギーの方には接種不可』  そうだ。なぜ、あのアンドロイドは、アンドロイド用ワクチンではなく、人間用ワクチンを接種したのだろうか。そこまでして人間になりたかったのか?  レスキュー隊に鎮痛薬を投与され、意識がおぼろげになる。  この事件にはPlantが大きくかかわる。  Plant。意味は ①苗床 ②工場 ③侵入者  わたしは③だ。
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