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が、シンはとうとうそのままトイレから出てこず、迎えに行ったオレが個室のドアを蹴り上げても反応がないため、店員を呼んだ。
そして、その店員は救急車を呼んだ。
結局支払いはオレになった。
オレの計算が正しければ、倍の出費だ。これなら、馬券を買う方に回した方がましだった。
店を出て、すっかり暗くなった街を歩いていると、オレの肌を湿った空気が包み込んだ。
降るのかな。
オレは、星ひとつ見えない真っ黒な夜空を見上げた。
もはや、道を急ぐ気にもならない。
「いいぜ。最近いろいろあるしな。どうせ来るなら、まとめて来やがれ」
そう小さく独りごちると、オレの頬を撫でるように、なま温かい風が吹き抜けた。
(了)
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