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が、オレの読みは外れていたようだ。
「金を貸してくれないか」
がっくり来た。
今夜は理由つけて来なければよかった。
女に金をもらえなくて、オレのところに来たのだろう。
競馬なら年間で収支トントンになる線で当てられるのに、これはいわば鉄板レース。
なんで、そういうイージーな予想ができなかったのか、オレは内心自分を責めた。
こいつが泣き落とししてまで訴えてくるしつこさを知っているオレは、今さらそういう茶番劇でエネルギーも時間も無駄にしたくないから、黙って万札を1枚、指で挟んでから宙に飛ばした。
シンはそれに飛びつくと「話が早いな」と、にんまりした。
「ま、必ず返すからよ」
「当たり前だ」
でも、全額返ってきた試しはない。
こいつの言う「また今度」は来世の話をしているのだ。
オレは自分にそう言い聞かせている。
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