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初めての記憶は、皺だらけの手だった。
深い森の奥から、姿を消した母の匂いを辿ってやってきた幼い人狼は、もう何日も乳を飲んでおらず、とうとう、森のはずれで力尽きてしまった。
大きな切り株の陰に四本の足を投げ出して横向きに倒れ、根と根が重なったところにできた水たまりの汚い水をぺろぺろと舐めるのが精いっぱいだった。
「おや、まだ生き残っている人狼がいたのかい」
そのとき、頭上から声がした。
人間と狼、どちらかに姿を保つ力さえもう出なくなっていた身体は、半分が人、半分が狼という、中途半端な状態になっていた。
だから、声の主にもすぐに人狼とばれてしまったのだろう。
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