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 倒れた獣に近づくと、ワインの匂いが鼻についた。  どうやら、血まみれと思ったのは、ワインだったらしい。  もっとも、今は獣自身の血も、べったりとまとわり付いていたが。  それを跨ぎ、ベッドに近づくと、老婆の脈を取った。  おそるおそる入ってきた娘に、首を振ってみせる。 「亡くなってる。この化け物になにかやられたに違いない。あんたはなにもされなかったか」 「ええ」  娘は頷き、足もとに横たわる血まみれの化け物に、恐ろしげな視線を向けた。 「そりゃあよかった」  猟師は銃をおろし、娘の隣に立った。 「あんたみたいな若い娘は化け物に狙われやすいからな、赤ずきんの嬢ちゃん」
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