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 逸話はやがて、話し手それぞれに好き勝手に尾ひれをつけられて、人々に語り継がれることとなる。  だが、決して誰にも語られないことが、ひとつだけあった。  暖炉の脇にあった、大型犬の寝床のようなクッションの陰。そこには、押し花を挟んだ本が一冊、置いてあった。  娘の好きな小さな赤い花を、老婆に教わって人狼が作ったものだ。  その存在を、娘が知ることはなかった。
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