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 まだ人間の怖ろしさを学んでいなかった人狼の()は、声の主へと無垢な瞳を向けた。 「おや、まあ……」  声の主は迷ったように呟いたあと、皺だらけの手を伸ばし、ちいさな身体を抱きあげた。 「本当は、よくないことなんだろうけどね……」  ぶつぶつと言う声が聞こえたが、温かい胸元に入れられ、母狼を思い出した仔狼は、ただ甘えた鼻息をたてるだけだった。
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