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 人狼は、あっという間に青年になった。  どうやら成長は狼のスピードに近いようだった。  三年も経つと体格も立派な成人となり、老婆ができない重い荷物持ちや、川からの水汲み、畑を耕すことなど、力を使う仕事を喜んで引き受けるようになった。 「最初は迷ったけど、育ててよかったよ」  天気のいい日にポーチに座る老婆の足元に、狼の姿で寝そべってくつろいでいるときなど、よくそう言われた。 「今まで殺されたあんたの仲間たちのなかにも、ちゃんと話せば共存できた奴もいたかもしれないね……」  しみじみと言う老婆に、返す言葉はない。  森のなかで生まれ、老婆に貰った食べ物で育った人狼は、他の人間を見たことがなかった。  当然、彼らが武器を手に襲ってくる姿も。  だから、人間たちに対する恐怖も、恨みも、持ちようがなかった。  ごくたまに老婆を訪ねてくる人間がいれば隠れるように言われていたが、それもあくまで言いつけとして守っているだけで、自ら選んだ行動ではなかった。
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