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 娘と人狼は、老婆に見つからないよう、隠れて会うようになった。  娘はこの不思議な青年の無垢さを気に入り、人狼は年頃の娘の身体から流れてくるいい匂いに、すぐに夢中になった。  ただ、娘の前で狼の姿をとることは絶対になかった。  その姿を人間にさらせば怖ろしいことが起こると、日ごろから老婆に何度も何度も教え込まれていたからだ。  言葉もあまりよく通じなかったが、異国の言葉しか話せないからだろうと、娘も深く追求はしなかった。  なにより、言葉などほとんど必要としなかったのだ。  森の奥にある大木の陰が常に密会場所で、娘がとりとめもなく独り言のように話す軽やかな声音の調子と、頻繁に重ねる熱い身体さえあれば、二人とも満足だった。
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