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それから黒猫は千鳥を助けるために、ありとあらゆることを試した。
だがしかし黒猫の奮闘も虚しく、15年毎に千鳥は命を落とした。
どんなに手を尽くしても、村が土に呑まれるのを回避することはできなかった。
そして土砂崩れが起こると、黒猫は必ず千鳥が吉野に抱かれて神社を詣でる日に戻り、鳥居の下で目覚めるのだった。
こうして10度目の春を迎えた。家の裏では桜が綻び始めた。この桜が満開になる頃、村はまた土に埋もれる。
150年ものあいだ同じ営みを繰り返し、黒猫は悟っていた。
『千鳥はすでにこの世のものではない』と。
「この現象はお前が原因なんだろう?」
満月の夜、黒猫は三分咲きの桜を睨みつけながら呟いた。
「私と千鳥の縁を繋いだのもお前だろう? お前のせいで私はあの子を失う苦しみを十遍も味わうことになった。ゆえに私は……お前が憎い!!」
黒猫は吐き捨てるようにそう桜に告げた。
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