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桜の木と黒猫の間に静かな沈黙が流れる。
やがて黒猫は再び口を開いた。
「『うちじゃあ昔っから、女の子が縁をつなぐのは桜と決まっとる』と河津は言っていた。お前は千鳥だけでなく、縁を繋いだこの家のおなごたちを護ってきた。
都に嫁げば千鳥は、母とも祖母ともお前とも別れることになる。都行きを拒んだ千鳥の願いをお前は叶えようとした」
月明かりの下、緑色の目がギラリと光った。
「…………村を土に沈めたのはお前だな?」
黒猫の言葉を受け、桜の木は微かに枝を震わせた。
「お前は千鳥たちを『三人が一番幸せだった時代』に村人たちごと閉じ込めた!!」
黒猫の目から涙が溢れた。
「もう十分だろう? そろそろお前の縁を切り、千鳥や村の人達の魂を開放してやってはくれないか?」
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