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修了式の通学路
「やっべ、遅刻ギリギリじゃね!?」
俺は走った。学校へと。今日は修了式で、いつもより登校時間が遅い。だから、「まだ出なくても大丈夫だろう」を続けてしまったのだ。修了式あるあるだとは思うけど、なんだかそんなのに該当するのは恥ずかしい!!
俺は全力でダッシュしていた。
「シュウヤ。」
ダッシュしている俺の肩を正確に叩き、俺の名を呼んだ人。その正体は……
「ヒヨ!!」
同級生の少女、ヒヨだった。ヒヨはいわゆる不良少女……のような何かで、髪色はコロコロと変えるし、いろんな箇所にピアスを開けている。そしていつも、ツンとした猫みたいな顔だ。顔もスタイルもかなり良く、見た目だけで言えば相当な美少女。素性がよくわからなくてミステリアスなのも、魅力といえばそうかもしれない。不良として一目置かれている一方で、実は一定の人気もあったりする。
俺?俺は……まあ、声は凄く好み。
「ヒヨ、遅刻するぞ……って、ヒヨが定刻通り来たことないか……。」
「あるし。オールした日はちゃんと来るもん。」
「え、あーそっか!じゃ、俺急ぐから!」
俺はまた走り出した。……走り出したかった。しかし、ヒヨに引かれた手によってそれは叶わなかった。
「ヒヨぉぉおおお!?!?やめてぇえ!?」
「今日、サボろ。」
「えぇ……!?いやいや、ごめんけど俺はそれには乗れないよ。だって、今日は離任式だってあるんだぞ……!?今日サボったら、好きな先生と別れの挨拶の一つも出来ないじゃないか……!!」
「耳貸して。」
ヒヨはひそひそ話で、俺に伝えてきた。
「……そういうことなら、俺もサボるわ。」
俺は納得して、踵を返した。
俺の家に向かう途中、ヒヨが言った。
「シュウヤも悪い子。」
「"も"って、自分で悪い子だと思ってるのか。」
「……よく言われるから、そうなのかなって。」
「そっか。ヒヨ自身はどう思う?」
そう尋ねると、ヒヨは足を止めた。俺は振り返り、ヒヨを見た。彼女は親指をグッと立てて、「凄く良い子。」と答える。
「本当に図太いな、お前。……前だってさ、"なんでピアスを開けるんだ"って山田先生に聞かれてたじゃん。そん時のヒヨの言い訳聞いた時も、コイツ図太いなーって思ったんだよな。」
「……うん……?なんて答えたっけ?」
ヒヨは小首を傾げている。こういう所なんだよな、図太いの……。
「気付いたら開いてました、って。」
「でもそれ、言い訳じゃなくて本当。」
「え?そうなの?」
「……嘘。」
「もう、本当にそういうところだぞ。嫌いじゃないけど!」
「よっしゃ。」
まだ朝なのに、帰宅するために通学路をあるくのはソワソワした。でも、ヒヨがいるから良いか……なんて気もしてくる。
「俺、こんなサボり方したら内申に響かないかな?」
「知らない。ヒヨはサボりばっかだし、比べるアテがないもん。」
「開き直ってる?」
「……嫌いじゃないでしょ?」
「うん。……あっ、家ここ。」
俺はヒヨを家に上げた。
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