14.朝食はケーキで祝われました

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14.朝食はケーキで祝われました

 ケガをしているフリで招き寄せたり、肌を晒してみたり……思いつく限りの手段を講じました。もうこれ以上は考えつきませんわ。 「もう大人しく寝てくれ」 「一緒にベッドに入ってくれなければ、起きています」  むっとした口調で抗議する私に、彼が折れてくれた。絶対に襲わないと約束させられたけれど。今日は約束を守って我慢します。でも明日は襲いますからね!  同じベッドなのに、肌の触れ合いがありませんね。広いベッドも考えものです。夫婦のベッドはもう少し狭い方が、使用目的に適うのではないでしょうか。大きく柔らかなベッドは財力の証ですが、私としては狭い方が好ましいです。 「手を握ってくださいませんか」 「……ああ」  このくらいなら譲歩していただけるみたい。私の魅力が足りないのか、迫り方が間違っていたのか。悩みは尽きませんが、明日にでもお母様やシベリウス侯爵夫人に手紙で尋ねるとしましょう。王妃殿下もご協力いただけるかも知れません。何しろ、国の一大事ですもの。  悩みを解決できそうな人達の顔を思い浮かべ、伸ばした指先に触れた硬い手を両手で包みました。胸元まで引き寄せ、がっちり押さえ込みます。これならどうでしょう。  胸を押し付けようとしたのに、腕がまったく動かない。何度もチャレンジしていると、くすくす笑う声が聞こえました。 「ひどいです、アレクシス様」 「酷いのは君の方だ。今日は寝ると約束しただろう」 「寝ます。でも胸に手を触れていただいたら、もっと()()()に眠れます」 「安らかに寝ないでくれ」  不吉な言い回しだと指摘されました。そうなのですか? では別の表現を覚えておきますわ。戦いに出る殿方にとって「安らか」は永遠の眠りを連想させるので、使わないとのこと。辺境伯家の妻になる私に必要な知識ですね。 「きちんと覚えました。他に覚えることは……」  どこまで話したのか。ぽつりぽつりと話した記憶は、途切れていました。目が覚めると、なぜか私のお部屋です。カーテンを開けるために入った侍女達は、気遣わしげに私の反応を待っていました。  昨夜の身支度や派手な下着から、いろいろと察したようですね。ですが、私は失敗しました。妖精王のお力もお借りしたのに。 「……()()()ましたわ」 「成功なさったんですね?!」 「え?」  やられたとは、そういう意味なのですか? 私の言葉遣いは、この屋敷で違う意味に捉えられるようです。訂正する間もなく、別の侍女に話が伝わり……屋敷中の人の耳に入ってしまいました。  着替え終えて化粧を施し、髪を結い上げてもらう。食堂へ向かう私の隣には、アレクシス様がおられました。執事のアントンに、エスコートを提案されたそうです。お互いに首を傾げたものの、私は嬉しいので腕を絡めて食堂へ入りました。  美味しい料理を楽しみ、なぜかデザートにケーキが用意されています。朝から豪勢ですわね。アントンが目頭を押さえ、ようやくと呟いていましたが、何かあったのでしょうか。  午前中は侍女に勧められてお昼寝を少し。昨夜のやり取りが長く、寝不足気味なので助かりました。そう伝えたら、嬉しそうに「おめでとうございます」と声を掛けられる。このお屋敷の人達は、皆、私とアレクシス様の結婚を喜んでくれているのね。  お祝いには素直にお礼を伝えました。淑女の礼儀ですもの。
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