74.作戦を練って迎え撃つ覚悟です

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74.作戦を練って迎え撃つ覚悟です

 国王陛下経由で、お手紙が返ってきました。妖精王様の訪問から三日目です。皆様、急いで返事を書いてくださったのですね。聞いたお話では、ほとんどの方がその場で読んで返事を書き、我が国へ戻る使者に持たせたとか。出した手紙の半数は、まだ旅の途中でしょう。  すでに国王陛下が確認を終えられたお手紙は、協力する旨が多かったです。一部「だから僕と結婚しよう」と見当違いな文面も混じっておりました。纏めて束ねたら、お父様へお送りしましょう。きっと対応してくださいますわ。 「ヴィー、作戦を一つ考えたんだが」 「お伺いします」  テラスに用意したお茶を楽しみながら、アレクシス様の作戦を聞きます。少し掠れた声がとても魅力的で、うっとりしますね。内容は物騒でした。いえ、軍事作戦としては普通なのですが、夫婦の会話には不似合いです。 「どうだろうか」 「素晴らしいと思います。お兄様達にご相談しますわ」  本当に優れたお方です。相手へのダメージも大きいですし、私もすっきりします。妖精王様の加護があるので、いざとなれば私は安全を確保できるのです。その点を作戦に組み込んでくれたのが、とても嬉しく感じました。 「ならば義兄殿に相談しよう。義父上殿もご一緒がいいか。予定を」 「ふふっ、私の家族を頼ってくれて嬉しいです」  ご家族に裏切られたアレクシス様が、私の家族を実家以上に頼ってくれる。気持ちが吹っ切れたのでしょうか。照れた様子で「信じられる方達だからな」と頬を指でかく仕草は、目に焼き付けておきたいですわ。  作戦に大きな道具や人数は必要ありません。多少の度胸と勇気があれば事が足りました。 「絶対に勝ちます!」 「もちろんだ」  同意するアレクシス様の手を握り、そっと距離を詰め……唇が触れそうな距離で逸らされました。 「もうっ!」 「作戦が成功したら、俺からキスをする」 「約束ですわよ、約束ですからね」  二度繰り返した私に、アレクシス様はやや赤い顔で頷きます。絶対ですよ、嘘だったら一ヶ月は許しませんから!  いそいそと鍛錬に戻るアレクシス様を見送り、冷めてしまった紅茶に口を付けました。  ヘンスラー帝国の王子……名前は覚えていませんが、顔はそこそこだった気がします。王族はとかく美女と結婚するので、美形が生まれやすいのは当然ですが。あの顔を歪ませてやりますわ。  そうと決まったらお昼寝です。夜に妖精王様をお呼びして、作戦をご説明しなくてはなりませんもの。あと、アレクシス様にくださった加護も聞いておきたいですね。  帝国は海の向こう。これから海が荒れる季節です。我が国からお断りを送って、届いてから出陣したとして……二ヶ月は先ですね。もしこちらの準備より早く攻めてくるなら、妖精王様にお願いしましょう。  大荒れの海で、いくつの船が転覆せずに到着できるのか。ふふっ、その作戦も一緒に提示しておきましょう。もう温もりの消えたベッドに横たわり、私は幸せな夢を見るために目を閉じました。
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