9人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
1.雷のように突然に
一目惚れの衝撃は、まるで雷に打たれたようだという。実際にその通りだった、とサーニャは後になって仲間たちに語った。
目が覚めた時、サーニャは病室のベッドに寝かされていた。それ以前のことは一切覚えておらず、看護師に告げられてようやく、自分の名前がサーニャであること。兄と二人暮らしであったこと。落ち穂拾いの手伝いをしていて、運悪く雷に打たれてしまったことを知った。
「不思議。あたし、なんで死ななかったのかしら」
サーニャは記憶のすべてを失ったものの、天性のあっけらかんとした性格から、然程悩んだ様子は見せなかった。
しかし、それも兄との仲が悪くなるまでのことで、彼が自分のことを一切覚えていない妹を重荷に感じ始めたあたりから、サーニャの精神は不安定になっていった。
「だって、色々言われたって、なんにも覚えてないんだもの。兄さんには悪いと思うけど……」
サーニャは努めて明るく振舞っていたけれど、周りからの迷惑そうな眼差しに気付かないでいることはできなかった。兄だという知らない男の人が溜息をひとつ吐くたび、サーニャの心はぐらりと揺れる。
そんなある日、サーニャと周りの人々は、彼女が新たに身につけた特殊能力を目の当たりにする。
最初のコメントを投稿しよう!