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「雷ったら、記憶の代わりに、本当に厄介なものを寄越してくれたのよ。信じられる?」
「信じるよ。俺だって、まさに今、それを目撃しちゃったんだからね」
レイモンドは口元に拳をあて、クスクスと笑った。サーニャはうっとりとその笑顔に見惚れる。彼女はレイモンドのベッドに半分腰掛け、ねだるような上目遣いで尋ねた。
「ねえ、レイって呼んでもいい?」
「いいけど。またここに来るつもりなのかい?」
「うん。あなたさえよかったら、だけど」
あっ、とサーニャは慌てて付け加える。
「もちろん、次に遊びに来る時は、ちゃんと自分の足で歩いてくるから」
「うん。是非そうしてほしいね」
半刻ほど前のこと。
自室のベッドで療養していたレイモンドは、突如目の前に現れた少女を見て仰天した。本当に何の前触れなく、いきなりそこに立っていたのである。
「う、うわああぁぁ! 何だキミは! どっから入ってきたんだ? この、泥棒!」
「ちっ、違うわ! ちょっと待って!」
そう言って咄嗟に身の潔白を証明しようとしたサーニャは、薄闇の中で捉えた青年の姿に心を奪われる。それはまさしく、一目惚れであった。
それから彼女は、敵意がないことを示すのに全力を尽くし、彼女がこうなってしまった経緯を語って聞かせたのだった。
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