サニーデイ

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にこ、と会釈をされ。部下は真っ赤になった。 「一緒にケニアから来た、留学生が。貧血で、介護室で休ん でた。明博が、付き添ってる。今来るから。車、回して」 「そうなんや?病院連れて行くか?」 「ううん。初めての長時間フライトで。疲労だって。入寮手続 のコト、心配してるから。学校行きたいって」 「判った。先輩ひとりで、荷物とか平気なん?」 「もう1人の留学生は、元気。あ、来た」 空実が遠くに投げた視線の先には、周りの渡航客から頭 1つ飛び出た神田がいる。空港で借りたらしい車椅子には 恥ずかしそうにしている子と、それを押すもう1人。 まだ幼さが残る2人の女の子だ。神田がいなければ、さぞか し不安だったろう。 神田はその子達の様子を見守りながら、スーツケースが積み 上がったカートを押している。シャツにGパンと軽装だが。髪 には白いものが混じり、目元の優しい笑い皺は深い。 日本人の40歳にしては老けている気もする。 逆に言えば貫禄があり。これまで、いくつもの研究機関を渡 り歩いて来た苦労と成果の大きさが感じられる。 「悪いなあ、中西。待たせてもて」
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