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ずっと隙間風にさらされたまま我慢していた様子に、
気付いたらしい。
「そのへん置いとったら、ウチの部員が後で片づける
から。なんも気にせんでええで」
見上げると、薄い銀縁の眼鏡の向こうに優しい目
があった。
「ありがと…ございます…」
「初参加やろ?招集かかったら、オレらの後付いて
移動したらええから。緊張せんでな」
大きな手がぽんぽんと、空実の頭に軽く触れた。
ジャージは先刻まで持ち主が着ていたのか、ほんのり
体温があった。空実は、ふーっと身体から力が抜ける
のを感じた。
(オレ、緊張してたんだ…)
こうだー!と名前を呼ばれて、選手群の方へ向かう
長身の後ろ姿をぼおっと見送る。ジャージにはKO
UDAと刺繍があった。
(あのヒトの後ろ、付いて、走ろう)
各校1・2名参加で合計14名がスタンバイする。
スタートラインで高校3年らしい選手達が、さっきの
長身へ『オレ等への餞別としてペースメーカーせえよ』
『そーや、ハンデ付けなな』なんて小突かれ笑っていた。
その長身の選手は、このお祭りレベルの陸上部門
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