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「いえ。先輩らしゅうて、なんかほっとしますワ。変わりません
ねえ」
中西は笑っている。神田先輩と空実と。揃うだけで、もう
ワクワクする。施設の誘致が決定した時から、ずっと心待ち
にしていた新しいスタートだ。中途半端に終わってしまった大
学時代の先の時間が、やっと動き出す感じだ。
あの時はもう全てが終わって、変わってしまうと虚しくなって
いたけれど。
今また新しい続きを、目の前で見て。少しでも加わることが
出来るのだ。期待でいっぱいだ。
駐車場へ案内しながら、中西は空実に尋ねる。
「寮へ先行って。その後、どうするんや?」
「明後日、大阪戻る。お墓詣りして。パパとママに家のこと、
相談する、みたい」
農園から借りて住んでいた家は、あの後、農園職員家族
が入れ替わり使っていたが。老朽化で、今は更地になって
いた。そこに新しい住まいを建築する予定だ。
「今晩は、農園に泊まる。きららの形見も、預けてあるし」
空実の薬指と、右手の小指には小さな同じリングがある。
ずっと3人一緒だったようだ。
「ほんなら、農園行く前に新しい競技場見に行こうや。
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