第1話 あなたの舎弟にしてください!(1)

1/3
前へ
/101ページ
次へ

第1話 あなたの舎弟にしてください!(1)

  不破龍之介(ふわりゅうのすけ)は何というか人相が悪く、見た目こそ《不良のそれ》ではあるが、生まれてこの方そういった自覚はない。喧嘩なんて滅多なことではしないし、学校の授業だってサボることはない――ごくごく普通の男子高校生だ。  だから、目の前にいる男子生徒が発した言葉にひどく困惑した。 「俺をあなたの舎弟にしてください!」  放課後の体育館裏。桜の花びらが舞うなかでのことだった。  こんなところに呼び出されたと思ったら、待っていたのは男子生徒だったし、開口一番に「舎弟にしてください」だ。予期せぬ事態に頭がくらくらとしてしまう。 「とりあえずツラ上げろよ。ンなこと、突然言われても困るっての」 「あ、すみませんっ……とにかくですね、不破先輩のお役に立ちたいんです!」  なおも相手は真剣な様子で、こちらをまっすぐに見つめてくる。  おそらくは先日入学したばかりの一年生だろう。制服がまだ真新しい感じだし、身長だって女子と大して変わらない。おまけに随分と童顔だ。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

310人が本棚に入れています
本棚に追加