星の英雄

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「宇宙を放浪して何日が経ったんだろうか。」 男がつぶやく。地球に接近している二つの隕石のうち地球への衝突が想定される巨大隕石を破壊するための緊急プロジェクトに名乗りを上げて宇宙船に乗り込み、隕石を破壊して地球への衝突を回避した。任務は成功したが破壊による想定外の衝撃波により宇宙船の進路が予定ルートから逸れ、地球との交信が途絶えてしまった。しかし男は自分が全人類の命を守った英雄であるために今頃全人類が総力を挙げて自分を助けてくれようとしているという確信を持っていたために冷静であった。 窓の外に星が見えた。食料が底つきそうだったこともあり男はこの星に着陸した。空は火山灰に覆い隠され、日光の届かない地上には生き物や植物の死骸が転がっていた。ところどころに火柱がたち、噴火した火山の溶岩が一面に広がっていた。生気を全く感じさせないその星に男は食料の当ては無いとし、星を後にした。その荒廃した星が地球であることなど知る由もなく。男が破壊した隕石は地球への衝突の恐れのないほうであった。その後も男は計画が失敗し、自分が最後の人間であることに気づく訳もなく名誉ある地球の英雄として助け出されるその日を信じて宇宙をさまよう。
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