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不死鳥のこどもたち
ちづるが8さいのとき、ちづるのおとうさんが流行病で亡くなってしまいました。
「おまえたちは、おとうさんよりもおかあさんよりも、ずっとずっと長生きするんだよ」
ちづるが10さいのとき、ちづるのおかあさんが流行病で亡くなってしまいました。
「あんたたちには、不死鳥の血がながれてる。いままで風邪もひかないで、流行病にもかかったことがないのがその証拠。でも、それはだれにも言っちゃだめよ。おかあさんとの、やくそく」
ちづるたちは悲しみました。おとうさんもおかさんも失ったいま、どうすればよいのでしょう。そんなよにんをかわいそうにおもったご近所さんたちが、お世話にきてくれるようになりました。
ちづるたちのおかあさんが亡くなってから、じゅうごねんが経ちました。ちづるは25さいになりました。ちづるたちは、18さいをすぎたころから見た目がかわりません。どうしてでしょう。ちづるの兄、たけと が言いました。
「かあさんが死ぬ前、おれたちに言ったじゃないか。『あんたたちには不死鳥の血がながれてる』って。そういうことなんじゃないか ?」
ある日ちづるは、むらのひとたちが話しているのを聞いてしまいました。
「あの家のよにん、ここさいきん、ぜんぜん歳をとらないんだよ」
「ばけものなんじゃないか!?」
「わたしたちに危害がおよぶまえに殺してしまったほうがいい」
ちづるはいそいで家にかえって、いま聞いたことをほかのさんにんに話しました。
「はあ、けっこうはやくきづかれたわね」
ちづるの姉、うたはあきれたように言いました。
「ぼくたち、殺されちゃうの……?」
弟のひろは、いまにも泣きそうです。
「……よし、今夜みんなで家をでよう。とうさんとかあさんにはもうしわけないけど… みんな、にもつをまとめて」
たけとは悲しそうに、そう言いました。
あの日の夜、家をでたちづるたちは、とおいとおい地をめざして歩きました。みっかも歩くと小さな集落をみつけたので、そこにすむことにしました。
その集落で、さんねんもすむとまたひっこさなくてはいけなくなりました。新しいところにすんではひっこす。そんなせいかつが、なんねんも、なんねんも続きました。
また、村をでていかなくてはいけなくなりました。むらのひとたちが、ちづるたちのことを疑いはじめたのです。
「……みんな、もう言わなくてもわかるよな」
たけとはひくい声で言いました。
「……また、にげるんだよね」
ひろは、ちからなく言います。
「わるいけど、あたしはもうにげないからね」
うたはきっぱりと言いました。
「「「なんで!?」」」
さんにんは口をそろえて言いました。うたはなにを考えているのでしょう。
「あんたたちはすきにしてかまわないけど、あたしはもう、こんなせいかつこりごりなの。あんしんして眠ることもできない。こんなんなら、さっさと殺されて死んだほうがマシよ」
ちづるとひろは止めようとしましたが、たけとは
「……そうだな。うた、ごめん。いままでつらいおもいをさせてきて。…………ちづる、ひろ、にもつをまとめろ、今夜でるぞ」
と、静かに言いましたーーー
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