不安の渦

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不安の渦

…………フラれたのだろうか。いや、でも、考えさせてと言っていた。走り去ってしまったのは、僕のことが嫌だったからなのか。去り際に泣いているように見えたのは気のせいか、気のせいじゃなかったら、一体何故泣いてたの? 告白してから一日経った。今日から学校なわけだが、昨日のことが頭から離れない。始業式、校長からのありがたい言葉も耳に入らない。授業中も上の空。千鶴さんのことを考えずにはいられなかった。どうしよう、やっぱり告白なんてしない方が良かったのだろうか。そうすれば、こんなに不安で不安でもどかしい思いをすることはなかったのに。 ぼーっとしながら、どんどん時間が過ぎていく。いつの間にか一日が終わっていた。亮に声をかけられて、やっと我に返る。 「お前、今日大丈夫かよ。目が死んでるぞおい」 「あー、大丈夫じゃないかも……」 大丈夫じゃないのに大丈夫なんて言えるほど、大丈夫な状態なんかじゃなかった。 「ガチで大丈夫じゃなさそうだな。どれ、俺に話してみぃよ」 亮に言われると話したくなるものだから、不思議だ。 「ほう、なるほどね。あの子に告白したのか。お前も結構やるなぁ」 そんな言葉を望んでるわけじゃない。亮の方を睨む。 「ごめんって。お前にしちゃあ頑張ったなって感心してただけだよ。 でもその子は、少し考えさせろっつったんだろ?まだ諦めるには早いって。とりあえず、図書館に行ってみたらどうだ?そこでしか会えないだろ」 確かにその通りなんだが…… 「うじうじ考えてないで行けって。少なくとも今日は放課後に部活無いから、今から行ってこいよ。会えなかったら会えなかったで、会えるまで毎日行けばいい」 「……そう、だよな。ありがと、亮」 「いいってことよー」 亮に聞いてもらったことで、少し元気になった、ような気がする。図書館に行こう。そうしないと始まらない。 結果的に、千鶴さんはいなかった。一番端の席を見ても、誰も座ってない。なんだか寂しい。昨日まではいたのに…… 次の日も、その次の日も、そのまた次の日も、部活終わりに図書館に寄ったが、千鶴さんには会えなかった。……やっぱり嫌われたか。そうとしか思えない。思い足取りで、今日も学校へ行く。 部活終わり、いつものように亮が寄ってくる。 「よう!あー、千鶴ちゃん?だけっけか。昨日も会えなかったのか、今日の様子じゃあ」 「まーね…… 僕、ガチで嫌われたのかな……」 「だーかーらー!会えるまで毎日行けば会えるんだから。千鶴ちゃんだって、お前の気持ちを蔑ろするような子じゃないだろ?返事聞けるまで粘れって。」 僕と亮って性格がまるっきり違うのに、今まで仲良くやってこれたのは、こういうところにあるんだろうなって思う。僕じゃ考えつかない言葉で僕を応援してくれる。励ましてくれる。 「……だな。今日も行ってみるよ。ありがとな、亮」 「グッドラック!」 まあ、そんな気はしていた。昨日も一昨日も、その前の日もいなかったんだから、今日もいないだろうなって。亮に励ましてもらってここまで来たが、今日もダメだった。もう、こんなこと続けるだけ無駄じゃないか。明日も、明後日も、明明後日も、きっと千鶴さんは来ないんだろう。 今日でここに来るのはやめにしよう。千鶴さんにはフラれたということで諦める。悲しいけど、不思議と涙は出ない。きっと今の僕には、涙を流す気力さえ残っていないんだ…………
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