愛の始まり

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「……すみません、そんなこと言ってもらえると思ってなくて…… 嬉しくて、涙が……」 千鶴さんは恥ずかしそうに僕から少し離れる。あれから千鶴さんは、ずっと僕の腕の中で泣いていた。少しは落ち着いただろうか。 「全然大丈夫だよ。…………その、不老不死、というのは……」 「やっぱり気になりますよね。詳しいことは私にもわからないんですけど。私の母が、傷ついた不死鳥を助けたことがあるみたいで。子供ができなくて困っていたら、助けてくれたお礼にって、不死鳥が子供を授けてくれた、みたいな」 不老不死の次は不死鳥か。本当に信じられないことばかりだ。でも、千鶴さんが言うことなら本当なんだろう。千鶴さんが嘘をつくような人には見えないから。 「だから、産まれてきた子供は不老不死だと?」 「はい。多分そういうこと、です。 …………やっぱり、信じられませんか?」 そりゃあ、簡単に信じられるようなことじゃない。けど、もし千鶴さんが不老不死だとすれば、色々辻褄が合うような気がする。自分のことをあまり話そうとしなかったのも、このことがバレるのを防ぎたかったからなんじゃないか。オカルトの本で不死鳥のことを調べていたのも、自分のことを知りたかったから。 「…………いや、信じるよ」 「本当ですか!?」 「うん。というか、別に僕は、千鶴さんが不老不死だろうが何だろうが気にしない。僕は千鶴さんの全部が好きだから」 言ってから後悔した。僕は今、とんでもなく恥ずかしいことを言ってしまったのでは……? 「えへへ。改めて言われると恥ずかしいですね…… でも、本当に嬉しいです」 「あはは。僕も改めて言うと恥ずかしい」 僕たちは、日が暮れるまで図書館の前で話していた。夏だから、外はまだ少し暑かったけれど、千鶴さんと喋っているとそんなこと気にならない。結局、会話の内容はいつもと変わらない世間話だった。関係が変わったからって、変にギクシャクしちゃうのは嫌だから、これくらいが丁度いいのかもしれない。 「じゃあ、今日は帰ろうか。暗くなってきたし」 「はい、そうしましょう。 ………………あの、雅紀さん」 「ん?何?」 「その、……ちゃんとお返事出来てなかったな、って思って。これから、……恋人として、よろしくお願いしますっ」 そっか、まだちゃんとOKもらえてなかったんだ。勝手に彼氏面してたのか。何か恥ずかしい…… 「ありがとう。こっちこそ、これからよろしく。……あのさ、明日も、またここで会える?千鶴さんともっといっぱい話したい、から……」 「…………はいっ!もちろんです!」 千鶴さんはそう言って、曇りなく笑う。やっぱり、千鶴さんの笑顔は眩しくて………… 最高に、可愛いな。
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