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最後の希望
師匠が最後に出会った人物こと住人さんは当時介護の専門学校に通っていた学生さん。
あの団地で怖い想いをしたのか、精神崩壊をして実家で療養中。
住人さんの保護者に連絡をしたらすぐに会いたいと言われたため、速攻移動中。
運転中の湊さんの横で私は景色を見ながらぼーっとしていた。
「精神崩壊か……本人に師匠のこと聞けるの無理ですかね」
「今の状態次第ってことかな。私も気になっているけどね」
私たち霊能者は簡単に信じてくれない存在。
誰もが偽って語れる職業。
資格証なんてものはないし、心で感じるものだから理屈では語れない。
私は湊さんや姉弟子、師匠とは違って自ら名乗ることに不安を感じている。
もし相手が大げさに反応したらどうしようと。
そう思うと私は霊能者失格なのかもしれない。
霊能者と誇れるのは、自分が霊能者であることに自信と誇りを持っている人だけだ。
「あ、あそこかな」
目的地はとある洋食屋さん。
そこで住人さんの保護者と一緒に食事をしてからとりあえずに会いにいくという流れだ。
腹が減ったらなにもできない。
私はそこでオムライスを食べて、英気を養った。
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