私の真相と新しい生活

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私の真相と新しい生活

 それから1か月後、私は自室に引きこもりながらデヴィッド・ボウイの歌を聞き入っている。  ギターとアンニュイなメロディが私の心を駆け巡っていた。  事件を終えた達成感と喪失感、心霊現象のせいで挫折した明日香さんのこととかあらゆることが脳裏に浮かぶ。  師匠を失った悲しみはしっかりとあるが、よくやったと褒める気持ちがあった。  というのも、実は湊さん以外の姉弟子からリンチされたことがある。  ボロボロの状態になった私を師匠は知り合いであるこの神社の神主に託していったのだ。  それが6年前のこと、師匠は姉弟子たちをちゃんとけじめ付けさせると言っていたがそれがこういう形で実現した。  みんなの母親として、そして先生としてのけじめがあの団地の出来事だ。  団地の心霊現象が並大抵ではないことを感じた師匠は思いついたのだろう。  姉弟子たちに私の痛みを理解させるために、道ずれにしようと。  もう一つのけじめは遺産を私に相続させたことだが、一人だけでは申し訳ないので湊さんに分割して渡した。  そういう経緯で私は現在高校生ながらも不登校で一日中デヴィッド・ボウイの音楽にふける生活をしている。  心霊現象を生み出す卵を得たいとあらゆる依頼を受けているが、あの時の明日香さんのような美味しい物には巡り合ってない。  ああ、あの卵食べたいなあと思いながらゴロゴロしているといきなり自室の扉が開かれた。 「おいこら、このデヴィッド・ボウイ野郎。また学校さぼってんのか」  やってきたのは湊さんだ。 「湊さん、忌引き休暇ですよ。母親を失って精神的につらいんですから」 「ほう、忌引き休暇って一か月もあるのか……んなわけないだろう。お前は学生だから学校に行け」 「やだよ。こっちは霊能者で神社の手伝いをする立派な仕事があるんだよ。普通の高校生じゃねえんだからな」 といつも通りの口喧嘩をする。 「どこが立派な職業を持つ人だよ。ひたすらデヴィッド・ボウイの歌を聞いているだけじゃねえか」 「いくら姉さんでも許しませんよ。デヴィッド・ボウイを侮辱するのは。これは英語の勉強ですよ。英語を知りたいならひたすら英語の歌を聞けってネットにあったんですよ。人間関係でごたごたしやすい学校に通うよりはこうやって好きな音楽に囲まれる方がマシっすよ」 と理屈を通していると、湊さんの後ろからひょこりと見覚えのある顔が出て来た。
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