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運命を感じた理由
「本当、突然のことですみません」
明日香は湊と平田に頭を下げる。
「いえいえ、美緒の情操教育のためにも良いと思いますから」
「それにしても運命ですか? すごい理由ですね」
と湊は姉としての厳しい意見を言い、平田は明日香に尋ねた。
「実は、あの子の顔が行方不明の母の顔と似ていたので気になったんです」
「行方不明……? あれ、事故でお亡くなりになったのでは?」
と事情を予め聞いていた二人はえっと驚く。
「ああ、表向きですね。ただ本当は違うのです。父は即死だったそうなんですが、一緒に乗っていたはずの母がいなかったんです。どこかに連れ去られたのかわからなくて。あと、あの時私は姉になるはずでした」
「……ってことはお腹の中に赤ちゃんが?」
「はい……」
美緒たちが帰った後、明日香は叔母と話をする。
もしかして、あの子はと。
「美緒さんが私の希望になるかもしれない。そう思ったら居ても立っても居られなくて」
明日香が過去に支配されていたのは悲しみのせいではない。
何が起きたのかわからないという不気味さがあったから。
あの時何があったのか、そして母親はどうなったのか。
美緒は何者なのか。
それと同時に明日香は気になっていた。
自分の中にあった卵はどうなったんだろうと。
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