6.最後の酸素マスク

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 午後の授業を何とか乗り切って、帰り支度をする。今日は早めに寝よう。 「ちょっと」  織部に呼び止められた。 「どうした」 「昼の夢の話だけど」  その話を、今あえてするのか? もしかして織部は夢占いに詳しくて、ものすごい不吉な予兆なのを知っていたとか? 「なんだよ」  正直ちょっと怖くなったが、俺は平静を装って返事をした。 「あの、もし、同じ状況になったら、順番じゃなくったって、俺は彦根に譲ってもいいと思ってるから」 「な、なんだって?」 「好きなものなんて言えないし、人前で自分を出すとか無理だと思ってた。友達とか、できなかった。でもあんたのおかげでできたから、感謝してる。これが、言いたかっただけだから」  織部は白い頬を真っ赤にして言いたいことを一気に言ってしまうと、じゃあね、と走って行ってしまった。  なんだあいつ。いや、悪い意味じゃなくて。  ちょっと可愛いなとか思ってしまった。  何にせよ、俺は織部から言われたことが、嬉しかったのだ。
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